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キャラメルボックスの舞台『スロウハイツの神様』が、3月22日~31日まで東京・サンシャイン劇場、4月5日~7日まで大阪・サンケイホールブリーゼで再演される。

本作は、辻村深月による同名小説を原作とした青春群像劇。若きクリエイターが集うアパート「スロウハイツ」を舞台に、脚本家である赤羽環や小説家のチヨダ・コーキが、友人たちと共同生活を送る日々が描かれている。

今回は、脚本・演出を手がけたキャラメルボックス代表の成井豊、赤羽環を演じる原田樹里に取材を実施。劇作家と女優、登場人物と同じ表現者2人から見た本作の魅力や共感を抱いたポイント、初演時との変更点について話をきいた。

自分の才能に見切りをつけた」成井が共感したクリエイトの苦しみ

——『スロウハイツの神様』を舞台化しようと思ったきっかけを教えてください。

成井豊(以下、成井):原作を読んで感動したからです。主人公2人のうちの1人、チヨダ・コーキが抱えるクリエイターとしての苦悩に強く胸を打たれたというか、他人事とは思えなかった。私も自分の才能に見切りをつけた経験がありますし、劇団を作ってから33年間苦しみ続けてきましたから。『スロウハイツの神様』には、クリエイトの苦しみがとてもリアルに描かれているんです。

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——
自分の才能に見切りをつけたというのは?

成井:大学時代に行った5本の芝居を通して、プロを目指すことを諦めたんです。自分に才能がないことが分かったので、もとから興味のあった教員になりました。要は挫折したわけですね。ただあまりに荒れた高校へ着任したために、ストレス解消しようと思ってキャラメルボックスを立ち上げて(笑)。社会人劇団だったところから規模が大きくなり、教員と両立できなくなったという流れです。もう一度芝居に取り組むときは、「40歳までに1人前になる」という目標を立てて、才能がないんだから15年以上かけて努力しようと思っていました。

よりリアルに近づく、役との向き合い方

——原田さんは演じられる主人公・赤羽環に対して、自分と共通する部分を感じますか。

原田樹里(以下、原田):環はコウちゃん(チヨダ・コーキ)に対する想いや愛情がとても強いキャラクターなんです。私も好きなものを大切にしたい、守りたいという気持ちが強いほうなので、そういう部分に共通点を感じていましたね。

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——初演時と比べて変更した点を教えてください。

成井:前回どうしてもやりたかったものの、時間の都合上カットしたシーンを新たに加えています。演出に関しては、初演と基本方針は変わりません。ただ、どんなお芝居でも、稽古に取り組める期間は長くないので、荒削りな部分が出てきてしまうことがあります。例えば、「この人物はもっとこういうキャラクターであってほしかった」といったような。再演だと、そうした点に気づいた上で稽古を始められるので、あとはそこを磨いて、尖らせる作業をしていくだけです。

——人物描写をより先鋭化させると。

成井:そうですね。例えば、環みたいに、極端な強さと弱さを兼ね備えている人はなかなかいません。『スロウハイツ』は群像劇なので、そういった1人1人の個性がもっと強く出た方が面白くなるんですよ。やりすぎるとリアリティが失われるので気をつけなきゃいけないんですが。

原田:役を演じていると、「あ、ここって本当はこう思っていたのかも」って急に腑に落ちる瞬間があります。今回は役に向き合っている時間が長いので、そういう発見がたくさんあるんじゃないでしょうか。



——演技を深めるために、どのような演出やアドバイスをしていくんですか?

成井:いま原田が言ったような気づきって、脚本家、演出家の立場からアドバイスして導けるものではないんですよ。だってそれは、役を生きてみないと分からないことですから。演出家と役者、それぞれのキャラクターに対する理解度は、最初は演出家のほうが断然高いんです。でも演じていくうちに、役者のほうがキャラクターのことを理解していきます。だから稽古当初は「この役はこうだろ!」ってダメ出しをするんですが、本番が近づくにつれ「このセリフの言い方はこうだと思うんだけど、どう?」って聞くようになりますね。

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——役を演じていくうちに見えてくるものがあると。

成井:初演のとき、環とコウちゃん2人だけのシーンでさ、最初立ち稽古したときのことはすごく覚えてる。

原田:あぁー。通常のキャラメルボックスの公演だと感情的に演じるようなシーンがあったんですけど、コウちゃん演じる大内(厚雄)さんは、「そっちのほうがコウちゃんっぽい」って理由で、あえていつもとは違う演技を選択したんです。

成井:「コウちゃんってこんな人なんだろうな」ってすごくリアリティを感じましたね。

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キャラメルボックスらしさを持つ役者とは?

——ちなみに成井さんは、原田さんの演技や人柄についてどのように感じていますか?

成井:原田は入団当初から実力がありましたし、変なプライドやカッコつけた部分がなかったですね。というか取り繕うことを考えられないバカっていうか……。

原田:いやいや(笑)!

成井:あはは(笑)。うちの劇団は斜に構えることを嫌う、「芝居が好きだ!」っていう人間が多いんです。例えば、入団オーディションの書類審査で目立つ写真を送ってくる、といった変化球を狙うような人は嫌われます。そう思わない?

原田:そうですね。 私は入団前の2007年に、キャラメルボックスの『トリツカレ男』という作品を観たんですけど、役者みんなが本当にお芝居を好きな、とても熱い集団だなって感じたんです。入団後もその印象は変わっていません。

成井:ずるいことをしないで、「キャラメルボックスに入りたいんだ!」っていう真っ直ぐな気持ちを持っている人が劇団員みんなに好かれます。それに加えて、みんなの前で自分の気持ちを吐露できるような素直な人がいいですね。そういう意味でいうと、原田には殻がないんですよ。演じる上で自分の殻を破る作業が必要ないので、いきなり役づくりにダッシュできる。役に対する向き合い方や役への集中力も、劇団の中でトップ3に入るくらい優れていると思いますね。


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——では最後に、観客のみなさんへメッセージをお願いします。

成井:『スロウハイツの神様』では、クリエイターもしくはそれを志望する登場人物たちが、もがき苦しむ姿が描かれています。何かを生み出すのはとても苦しいですが、でも苦しんだだけ価値がある仕事なんです。これから職業選択をする人に向けて、いちクリエイターの先輩として「一緒に苦労しようぜ! 楽しいぜ!」ってことを伝えたいですね。

原田:脚本が新しくなったり、平日限定で開演前に5分間のショートストーリーを披露したりと、初演を観た方も必ず楽しめる仕掛けを用意しています。役者がさらに成長した姿をお見せできるのも嬉しいですね。もちろん、全員が『スロウハイツの神様』を愛しているので、原作ファンを絶対にがっかりさせない自信があります。ぜひ観に来てくださいね!


【チケット詳細】

演劇集団キャラメルボックス
2019スプリングツアー
『スロウハイツの神様』
原作:辻村深月
脚本・演出:成井豊

キャスト
原田樹里 大内厚雄 木村玲衣 石川寛美 岡田さつき 小林春世 石森美咲 島野知也
ゲスト
玉置玲央 松村泰一郎 森山栄治

【東京公演】
2019年3月22日(金)~31日(日)
会場:サンシャイン劇場
【大阪公演】
2019年4月5日(金)~7日(日)
会場:サンケイホールブリーゼ

<全席指定>7,000円